高齢者の歩行速度は運動で変わる?介護施設で行った足の体操研究
更新日:10月9日
高齢者の歩行速度は、足に着目した運動で変わる可能性があります。介護施設で行った4か月の研究では、足の体操を加えた群で、速歩の歩行速度と足裏の使い方に改善がみられました。[1]
この結果を現場に活かすには、「何歳の人が、どんな支援のもとで、何を測った研究か」まで読むことが大切です。歩く速さの数値と、骨・関節の動き、施設で確認したい点を整理します。
どのような高齢者が、何をした研究?
2020年に学術誌に掲載された、1施設でのランダム化比較試験を紹介します。75歳以上で、要支援2または要介護1〜4の人が対象でした。[1]
参加条件には、歩行補助具を使わずに6m歩けることと、説明を理解できることが含まれます。歩けない人や、すべての要介護高齢者を対象にした研究ではありません。
最初に34名を運動群17名・対照群17名へ無作為に割り付け
4か月後の評価を完了したのは27名(運動群14名・対照群13名)
完了者の平均年齢は、運動群86.1歳・対照群84.6歳
運動群は施設の日常活動に加え、週2回60分の足の体操を4か月実施
研究では、床や椅子に座って足のアーチや前足部に働きかける運動を行いました。経験のある指導者が見守り、痛みのない範囲で、負荷を一人ひとりに調整しています。[1]

歩行速度・足裏・骨の指標はどう変わった?
速歩の歩行速度に変化
運動群の歩行速度は、平均0.61m/秒から0.84m/秒へ有意に上昇しました。対照群は0.72m/秒から0.63m/秒でしたが、対照群内の変化には統計学的な有意差はありませんでした。[1]
測定したのは、静止した状態から6mを速く歩くテストです。普段の歩く速さや、買い物などで長く歩ける距離を測った値とは区別して読みます。
前足部で床を押す場面を評価
歩行中に足で床を押して進む場面では、前足部のピーク圧の変化量が対照群より大きくなりました。速さだけでなく、足裏のどこで床をとらえているかにも目を向けた結果です。[1]
かかとの超音波指標にも変化
運動群では、かかとの骨を超音波が伝わる速さ(SOS)が上昇しました。これは骨の状態をみる指標の一つで、腰や股関節をDXAで測った骨密度の結果ではありません。[1]
QUSは、骨粗鬆症の診断や治療効果の判定に用いる検査ではありません。診断や治療方針は、医療機関で確認します。[2]
足の骨・関節から、歩く動きにつなげる
OSTEO®では、足を身体の土台として考えます。かかと、足のアーチ、指の付け根がどのように床を受け、そこから膝・股関節・骨盤へ動きがつながるかを大切にしています。
例えば、指の付け根を床に残してかかとが上がるときは、前足部が支点になります。足の骨と関節が動き、足裏の支える位置が移ることで、身体を前へ運ぶ動きにつながります。
指導では、「もっと強く」だけでなく、動かす場所と支える場所を伝えます。余分な力みを減らし、骨・関節を一つずつ動かしてから全身の動作へつなぐのが、OSTEO®の運動設計です。

今回の研究は、足の使い方と歩く速さを一緒に評価した点に価値があります。一方、関節の柔軟性や筋力の変化は直接測っておらず、改善の仕組みが一つに確定したわけではありません。[1]
介護施設で運動プログラムを導入する前に
研究で行った時間や回数を、そのまま全員の目標にする必要はありません。導入時は、参加者の状態、見守る人、無理なく継続できる時間を先に決めます。[3]
参加前に、医療・介護スタッフと確認する
骨折歴、現在の痛み、治療中の病気、服薬、歩行補助具の使用状況を確認します。運動で悪化しそうな骨・関節の問題があるときは、主治医などに実施できる範囲を相談します。[3]
座っていても、体調と動作を見守る
座位の運動も、全員に同じ内容が安全とは限りません。椅子や足元を安定させ、痛みのない小さな動きから始め、疲れや表情、呼吸に合わせて休憩します。
胸の痛み、めまい、いつもと違う強い息切れ、関節の強い痛みがあるときは中止します。症状に応じて医療者へ相談し、無理に続けないことをスタッフ間で共有しておきます。[3]
速さだけでなく、続けられるかを記録する
参加回数、痛み・疲れ、立ち上がりや普段の移動の様子も記録すると、次の実施内容を考えやすくなります。これは施設での運用を考える視点で、今回の研究で確認された成果とは分けて扱います。
歩行速度を測る場合は、歩く距離、声かけ、補助具などの条件をそろえ、専門職の判断で行います。研究の数値と比べるために、普段必要な杖を外したり、無理に速歩を求めたりはしません。
研究を活かすときに、知っておきたい範囲
4か月後の評価を完了した27名で得られた結果であり、すべての高齢者に同じ変化を約束するものではありません。転倒・骨折の減少や、要介護度の改善を直接確認した研究でもありません。[1]
運動群では有害事象は報告されませんでした。ただし、参加条件を満たした人に、指導者が負荷を調整して行った研究です。その条件を含めて、現場での安全な進め方を考えます。[1]
足の骨・関節に目を向けた座位運動を、歩く力へつなげる可能性が示されたことは、施設の運動を考える手がかりになります。対象者に合わせた指導と評価を組み合わせて活かしていきます。
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指導士は実践士の取得後に進む民間資格です。月額動画会員への登録と別途の対面講習が必要で、医学的な診断や治療を行う資格ではありません。受講条件は資格案内をご確認ください。
参考文献
[1]Yanaoka T, et al. The Effect of Foot Functional Training on Gait Ability in Older Adults with Activities of Daily Living Disability: A Randomized Controlled Trial. International Journal of Gerontology. 2020;14(4):320–326. DOI: 10.6890/IJGE.202011_14(4).0013 原著論文
[2]公益財団法人 骨粗鬆症財団「骨粗鬆症の検査」。 検査方法の解説
[3]厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023:身体活動・運動を安全に行うためのポイント」。 公的資料
本記事は、2020年の査読論文本文に基づき、参加者の条件・評価完了者・測定方法を整理しています。本文のイラストは説明用で、研究参加者や測定結果そのものを描いたものではありません。
執筆者
黒坂 志穂(くろさか しほ)
広島大学 准教授/株式会社OSTEO 代表取締役。骨に着目した運動プログラムOSTEO®の開発と効果検証に取り組んでいます。




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