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骨密度は腰椎・大腿骨・かかとでなぜ違う?部位ごとの特徴と結果の見方

10月1日
読了時間: 6分

更新日:10月8日

「腰の骨密度は正常なのに、股関節は低い」「かかとの検診では低かったのに、病院のDXAでは正常だった」


これは、おかしな結果ではありません。

骨は、部位によって構造も、受ける力も、測定方法も違います。

だから骨密度の結果は、全身を一つの数字として見るのではなく、

「どこの骨を、どの方法で測ったのか」から読むのが基本です。


腰と股関節で違ったら、低い部位を見落とさない


骨粗鬆症の評価で中心となるDXAでは、腰椎や大腿骨近位部を測定します。

腰椎、大腿骨頸部、total hipは、それぞれ別の部位です。

たとえば、腰椎 YAM 86%大腿骨頸部 YAM 72%だったとします。


この場合、「腰は86%だから大丈夫」ではなく、「股関節側は72%まで低下している」ことを確認するのが大切です。


なお、腰椎と大腿骨ではもともとの骨密度が違うため、g/cm²の数字をそのまま大小比較するのではなく、それぞれの部位のYAM%やT-scoreとして読みます。

日本の診断基準でも腰椎・大腿骨近位部が主要な測定部位とされ、国際的なDXA基準でも腰椎、total hip、大腿骨頸部を区別して評価します。[1,2]



腰椎は「海綿骨が多い。そして高く見えることもある」


腰椎の椎体内部には、網目状の海綿骨が豊富にあります。

海綿骨の骨梁は、上半身から加わる圧縮力を受け止め、変形しながら力を分散します。

つまり腰椎は、「上から押される力を受け止める骨」という性格が強い部位です。


海綿骨は表面積が大きく、皮質骨とは構造も力学特性も異なります。そのため、骨量の減少や骨梁構造の変化が骨の強さに大きく影響します。[3,4]


一方、DXAでは腰椎特有の注意点があります。

腰椎は、実際より骨密度が高く見えることがあります。

骨棘、変形性脊椎症、椎間関節の硬化、圧迫骨折、石灰化などが画像に重なると、X線を多く吸収するためです。


特に、「腰椎だけ妙に高い」場合には、骨が非常に丈夫なのではなく、変形の影響を受けていないかを確認する意味があります。


最新のDXA実施ガイドラインでも、腰椎はアーチファクトの影響を受けやすく、多くの場合BMDを高く見せるとされています。[5]



腰椎のちょっと面白い特徴


骨の内部には骨髄があります。

骨髄の環境も一生同じではなく、加齢とともに骨髄脂肪が増加します。


特に女性では、骨髄脂肪の増加が55~65歳ごろに大きくなることが報告されています。骨は単なるカルシウムの塊ではなく、骨髄、血管、骨細胞などを含む生きた臓器です。[6]



大腿骨頸部は「体重を支える細い橋」


大腿骨頸部は、大腿骨頭と大腿骨の骨幹部をつなぐ細いくびれです。

ここには、体重による圧縮地面から返ってくる力筋肉が引っ張る力曲げる力せん断する力

が組み合わさって加わります。


腰椎のように主として圧縮を受ける骨とは、力学環境がかなり違います。

さらに大腿骨頸部では、骨密度だけでなく、頸部の太さ、骨の角度、皮質骨の厚さ、海綿骨の構造なども骨の強さに関係します。[3,4] Annual Reviews


だから、腰椎が正常でも、大腿骨頸部が低ければ、その低値にはきちんと意味があります。



大腿骨頸部とtotal hipは同じものではない


結果票には、Femoral neck(大腿骨頸部)と、Total hipの2つが表示されていることがあります。


大腿骨頸部は、骨頭のすぐ下にある細い部分。

total hipは、大腿骨頸部だけでなく転子部などを含んだ、より広い範囲です。


同じ股関節周囲でも、測っている範囲が違うので数値が一致する必要はありません。

国際的なDXA基準では、大腿骨頸部とtotal hipの値をそれぞれ評価します。[2,5]



かかとは「地面からの刺激を直接受ける骨」

踵骨は、立つ・歩くたびに地面からの力を受ける骨です。

しかも内部には海綿骨が多く、身体活動との関連を調べる研究でもよく用いられます。

検診などで使われることが多いのが、かかとの定量的超音波法(QUS)です。


ここで重要なのは、DXAとQUSは別の検査ということです。

DXAはX線を用いて骨塩量を測定します。QUSは超音波が骨を伝わる特性を測ります。

したがって、「腰椎DXAは正常、踵QUSは低い」という結果は十分に起こります。


ISCDでも、QUSで臨床的に確立している部位は踵であり、かかとのQUSと中央DXAの結果が一致しないことは珍しくないと明記されています。[2]


かかとのQUSはDXAの代用品ではありませんが、骨折リスクや骨の状態を知る別の手がかりとして使われます。



骨は部位ごとに性格が違う

ここを押さえると、結果票がかなり分かりやすくなります。

骨は同じ材料でできていても、形、内部構造、受ける力が違います。

そして、骨の機械的刺激への適応も、強く刺激された部位で起こりやすい「部位特異性」を持っています。[4]



OSTEO®では、骨を「全身で一つ」と考えない

OSTEO®が重視しているのも、この部位ごとに骨を見る考え方です。

腰椎、大腿骨、踵骨、足部では、構造も役割も受ける刺激も違います。


だから、

「骨に良い運動を一つやれば、全身の骨が同じように強くなる」

とは考えません。


どの骨を意識するのかを決め、その部位に合わせて動かしていくことが非常に重要です。

足を対象にした黒坂らの研究でも、かかとや腰椎や大腿骨など、部位ごとにOSTEOの効果を検証しています。


もちろん、全身の骨に刺激を与える運動を行うことはとても有用ですが、骨密度検査などで、部位別に骨密度が低下している際などは、どの骨をターゲットにするかを決めてエクササイズすることも非常に有用な手段と言えます。


参考文献

  1. Soen S, et al. Diagnostic criteria for primary osteoporosis: year 2012 revision. J Bone Miner Metab. 2013;31:247–257. 日本骨代謝学会  

  2. International Society for Clinical Densitometry. 2023 ISCD Official Adult Positions. ISCD -  

  3. Morgan EF, Unnikrisnan GU, Hussein AI. Bone Mechanical Properties in Healthy and Diseased States. Annu Rev Biomed Eng. 2018;20:119–143. Annual Reviews  

  4. Nowak A, Ogurkowska M. Bone Health and Physical Activity—The Complex Mechanism. Aging Dis. 2025;16:3400–3420. Aging and Disease  

  5. Slart RHJA, et al. Updated practice guideline for dual-energy X-ray absorptiometry (DXA). Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2025;52:539–563. スプリンガーリンク  

  6. Patel VS, Chan ME, Rubin J, Rubin CT. Marrow Adiposity and Hematopoiesis in Aging and Obesity: Exercise as an Intervention. Curr Osteoporos Rep. 2018;16:105–115. PubMed  

  7. Kurosaka S, Ueda T, Yamasaki Y, et al. Effect of the “Building Osteo Neatly Exercise” program on quantitative ultrasound parameters and plantar pressure distribution for college-aged females. J Phys Ther Sci. 2019;31:717–723.




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参考文献・出典


1. 日本骨代謝学会・日本骨粗鬆症学会合同 原発性骨粗鬆症診断基準改訂検討委員会.原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版).Osteoporosis Japan. 2013;21:9–21.表2・注4。診断基準原文


2. ISCD. 2023 Official Adult Positions. 腰椎・股関節の評価、QUS、経時比較の公式見解。公式原文


3. Slart RHJA, et al. Updated practice guideline for dual-energy X-ray absorptiometry (DXA). Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2025;52:539–563. 診療・測定の実践指針。原文


4. Glüer CC, Wu CY, Jergas M, Goldstein SA, Genant HK. Three quantitative ultrasound parameters reflect bone structure. Calcif Tissue Int. 1994;55:46–52. 骨試料を用いた原著研究。出版社抄録


5. 勇崎賀雄.『50歳からは「筋トレ」してはいけない 何歳でも動けるからだをつくる「骨呼吸エクササイズ」』講談社+α新書.2017.


6. Kurosaka S, et al. Effect of the “Building Osteo Neatly Exercise” program on quantitative ultrasound parameters and plantar pressure distribution for college-aged females. J Phys Ther Sci. 2019;31:717–723. 原著論文。


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執筆者


黒坂 志穂(くろさか しほ)


広島大学 准教授/株式会社OSTEO 代表取締役。骨に着目した運動プログラムOSTEO®の開発と効果検証に取り組んでいます。

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