骨に負荷をかける運動とは?低強度から考える部位と強さ
更新日:10月8日
骨に負荷をかける運動で大切なのは、骨を部位ごとに見て、その骨が普段受けている負荷を少し上回る刺激を、安全に加えることです。
たくさん歩いていても、全身の骨を同じように使っているわけではありません。まず、日常であまり使えていない部位に目を向けます。
その部位へやさしい負荷を意識的に届け、慣れてきたら少しずつ調整します。この「どの骨に」と「その骨のいつもより」が、運動を選ぶ二つの軸です。
負荷は、大きいほどよいわけではありません。骨折を避けることを優先し、支えを使ってやさしく始め、骨の状態に合わせて調整します。
骨は、その場所にかかる負荷に適応する
骨は身体を支えるだけの硬い材料ではなく、使われ方に応じてつくり替えられる組織です。骨細胞は力学的な刺激を受け取り、骨形成と骨吸収の調整に関わります。普段の負荷に適応した骨へ、新たな適応を促す刺激を加えることが、骨を強くする運動を考える土台になります。[1]
ここでの基準は、他人が持ち上げられる重さでも、息が上がるほどの運動量でもありません。その部位が普段どのくらい、どの方向から使われているかです。同じ体操でも、日頃よく使っている骨と、動きや荷重の少なかった骨では出発点が違います。
「普段より少し上」は、一人ひとりの骨の状態と、これまでの動き方を基準に決めます。日常にどんな負荷を足すかを考え、続けたあとの動きや身体の状態も見ながら調整していきます。
まず「全身」から「部位」へ目を向ける
足の骨、大腿骨、骨盤、背骨、腕の骨は、形も日常の役割も異なります。歩くときには足から脚へ荷重が伝わりますが、それだけで腕や背骨を含むすべての部位に同じ刺激が届くわけではありません。
さらに、同じ足の中でも使い方は一様ではありません。かかと側に体重をかけることはあっても、指の付け根で床を支え、かかとを上げる動きは小さくなっているかもしれません。「よく歩いているから十分」と一括りにせず、足の前側まで使えているかを見てみましょう。
股関節まわりなら、椅子から立つときに足で床を支え、膝と股関節が連動しているか。腕なら、日常でどんな物を持ち、どんな動きをしているか。背骨なら、どんな姿勢で身体を支えているか。部位ごとに振り返ると、運動で補いたいところが具体的になります。
動きにくさや使っている感覚だけで、骨が弱い場所を判定することはできません。ここで探すのは「骨密度の低い骨」ではなく、「日常の中で使う機会が少ない部位」です。検査で低下を指摘された部位や骨折した部位は、その情報を主治医に伝えて負荷を決めます。
大きな負荷を目指す前に、骨折を避ける
骨が適応できる範囲では、負荷を大きくすることが骨形成を促す刺激になる面があります。しかし、負荷が過剰になると損傷が蓄積し、骨折につながります。骨を強くするための運動で、骨折を起こしてしまっては本末転倒です。[1]
そのため、骨にかける負荷は「大きいほどよい」とは決められません。特に、普段あまり刺激を受けていない部位には、いきなり強い衝撃を加えず、支えを使ってやさしい負荷から始めます。
骨がどこまで耐えられるかを、自分で強い負荷をかけて試さないでください。痛みがないことだけでも、骨折しない強度だとは判断できません。骨粗鬆症や骨折歴がある方は、骨の評価と動作の確認をもとに、医師や理学療法士と進め方を決めましょう。
低強度から「その部位のいつもより」へ進める
低強度は、運動の入り口として役立ちます。OSTEO®では、まず余分な力みを減らし、動かしたい骨と関節へ注意を向けます。身体を支える働きは保ち、関節の動きと荷重がどうつながるかを確かめるのが、運動設計の基本です。
負荷を調整するときは、次の順に考えます。
部位を決める。今日は足の前側、股関節まわりなど、どこへ働きかけるのかを一つ選ぶ
普段の動きを知る。動かす機会、動く範囲、左右差、支えの必要性を確かめる
やさしく加える。安定した姿勢で、普段あまり使わない範囲や支え方を、無理のない範囲で丁寧に使う
慣れてから調整する。痛みやふらつきがなく動けることを確認し、動く範囲やかける力を一度に増やさず、少しずつ見直す
最初の「動かし方を覚える段階」と、その後の「その部位に必要な負荷を足す段階」を分けると、進めやすくなります。動きの確認だけで骨密度への十分な刺激が得られたと考えず、骨の状態に合う範囲で次の負荷へつなげていきます。
足の前側に目を向ける、交互のかかと上げ
日常で指の付け根を使う機会が少ない方には、OSTEO®の交互のかかと上げが、足の支え方を確かめる例になります。狙うのは、足の前側で床を支え、足と膝の動きをつなぐことです。
安定した机や手すりに手を添え、両足を床につけます。右の指の付け根を床に残し、右膝が曲がる動きとともに右のかかとを上げます。左のかかとは床につけたままです。右を戻したら左へ交替します。
反動を使わず、痛みのない範囲でしっかり動かし、床へ強く打ちつけずに戻します。左右の高さを無理にそろえる必要はありません。普段かかと側ばかりで支えていた方は、まず足の前側を使う機会をつくるところから始めましょう。

詳しい動きは、交互のかかと上げを含む運動ガイドで確認できます。
股関節まわりは、立つ・座る動きで確かめる
椅子からの立ち上がりでは、足から膝、大腿骨、股関節、骨盤へとつながる支えに目を向けます。安定した椅子を使い、両足を床につけ、必要なら手すりなどの支えを使います。
足で床を支えながら立ち、膝と股関節が伸びていく動きを確かめましょう。座るときも急に腰を落とさず、足の支えを感じながら戻ります。背中を深く丸めたり、勢いをつけたりして負荷を増やさないようにします。

普段から楽に行っている方にとって、同じ立ち上がりを一度確認するだけでは新しい負荷とは限りません。反対に、活動量が落ちていた方には、立位で身体を支える機会を取り戻すことが大切な一歩です。
次にどの程度負荷を足すかは、これまでの活動と骨の状態を合わせて考えます。
研究から生かしたいのは、刺激の「届け方」
骨への刺激は、大きさだけでなく、加える間隔でも変わります。動物の骨に力を加えた研究では、低い負荷でも、一回ごとの負荷の間に休息を入れることで骨形成の反応が高まりました。これは、弱い刺激でも届け方によって反応が変わることを示しています。[2]
人の体操へ同じ秒数や回数をそのまま当てはめず、延々と繰り返すより、休息も含めて刺激を組み立てる視点に生かします。
人を対象とした私たちの研究では、運動習慣のない大学生女性40人を2群に分け、足のアーチと前足部に着目した運動を週1回60分、4か月行いました。踵を超音波で調べた指標のうち、音の伝わる速さ(SOS)では対照群との改善差が示されました。[3]
これは複数の動きを組み合わせたプログラムの結果です。かかと上げ単独や全身の骨密度、骨折予防の効果を測ったものではありません。
この研究で大切にしたのも、足を一つの塊として扱わず、アーチや前足部に着目し、痛みのない範囲で負荷を個別に調整することでした。[3]
今日の運動でも、「どの部位に、どのように負荷が伝わるか」を見る手がかりにしてください。
骨粗鬆症がある方の、短い安全チェック
骨粗鬆症があっても、状態に合う運動は続けられます。大切なのは、骨折リスクに合わせて動きと負荷を選ぶことです。[4]
骨折後、背骨の骨折歴がある、強い背中・腰の痛みがある場合は、始める前に主治医や理学療法士へ相談する
転倒しないよう、安定した机や手すりを使い、床の障害物を片づける
痛み、めまい、いつもと違う強い息苦しさが出たら中止する。急な背中・腰の痛みは受診して確認する
背骨の骨折がある方や骨折リスクが高い方は、強い衝撃や、重さをかけて背中を深く丸める動き、勢いのあるひねりを自己判断で加えない
運動は、必要な骨粗鬆症の治療に組み合わせて行います。処方された薬を自己判断でやめず、負荷を増やす相談には、骨密度の結果と骨折歴も持参しましょう。[4]
今日の一歩は、使う機会の少ない一か所から
まず、日常であまり使っていない部位を一つ選んでください。足の前側なら交互のかかと上げ、股関節まわりなら支えを使った立ち上がり。どの骨と関節が動き、どこで身体を支えているかを確かめます。
そのうえで、やさしい負荷から始め、慣れたら「その部位のいつもより少し上」を目指して調整する。骨を部位ごとに見ることと、日常の負荷を基準に強度を決めること。この二つを揃え、骨折を避けながら続けることが、骨に負荷をかける運動の基本です。
関連情報
参考文献
執筆者
黒坂 志穂(くろさか しほ)
広島大学 准教授/株式会社OSTEO 代表取締役。骨に着目した運動プログラムOSTEO®の開発と効果検証に取り組んでいます。


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