更年期の尿もれはなぜ起こる?骨盤底筋の役割と対策・受診目安
更新日:10月9日
更年期の尿もれは、もれる場面によって対策が変わります。咳やくしゃみで起こるタイプには骨盤底筋の練習が、急な尿意で間に合わないタイプには膀胱訓練などが役立ちます。[4]
まずは「いつ、どのようにもれるか」を確かめ、婦人科や泌尿器科で相談しましょう。骨盤・股関節の動きも大切にしながら、自分の症状に合う対応を選んでいきます。
更年期の尿もれは、どんなときに起こる?
尿もれは医学的には「尿失禁」と呼ばれ、いくつかのタイプがあります。次の違いは、自分の困りごとを医療者に伝える手がかりになります。[1]
咳・くしゃみ・動作でもれる
咳やくしゃみ、笑ったとき、運動したときなど、お腹に圧がかかる場面で起こるのが「腹圧性尿失禁」です。尿意を感じる前に、少量もれて気づくこともあります。[1]
急に尿意が強くなり、間に合わない
突然の強い尿意に続いて、トイレに着くまでにもれてしまうのが「切迫性尿失禁」です。咳やくしゃみのときとは、困る場面が異なります。[1]
両方の場面で起こる
腹圧性と切迫性が両方みられるものを「混合性尿失禁」と呼びます。相談するときは、どちらが多いか、どちらが生活に響いているかも伝えましょう。[4]
こうした例だけで病名を決めることはできません。尿が出にくい、痛みがあるなど、別の症状が伴う場合も含めて確認します。
更年期だけで、尿もれの原因は決まらない
更年期・閉経に伴う変化は、尿の悩みに関わる要因の一つです。加齢、妊娠・出産、体重、便秘、感染症、服用している薬なども関係します。[2]
骨盤底筋群は、骨盤の底で膀胱・子宮・直腸などを支え、尿を保つ働きにも関わります。ただ、尿もれをすべて「骨盤底筋が弱いから」と考えると、必要な対応を見落とすことがあります。[7]
乾燥感や痛みがあれば、一緒に相談する
膣や外陰部の乾燥・刺激感、性交時の痛み、繰り返す尿路感染なども、更年期に伴う泌尿生殖器の症状として現れることがあります。尿の悩みと併せて婦人科などで伝えましょう。[3]
筋肉の練習以外の対応が必要なこともあります。「年齢のせい」と我慢せず、特に排尿時の痛みや血尿は、更年期だけの症状と決めつけないことが大切です。[2]
症状に合う対策:骨盤底筋の練習と膀胱訓練
腹圧性・混合性では、指導付きの練習を
英国NICEの指針では、腹圧性・混合性尿失禁の最初の治療として、少なくとも3か月の指導付き骨盤底筋トレーニングを勧めています。[4]
骨盤底に詳しい医療専門職が、収縮できているかを確認してから進めます。回数だけを増やすよりも、使う場所と動かし方を確かめることが出発点です。[4]
切迫性・混合性では、膀胱訓練も選択肢に
無理に長時間我慢するという意味ではありません。混合性では、どちらの症状が主に困っているかに応じて、対応を組み合わせます。[4]
3か月・6週間は、指針で示された取り組み期間です。その期間で必ず治るという意味でも、受診せずに待つ期間でもありません。骨盤底筋の練習では、途中で経過を確認し、必要に応じて内容を調整します。[5]
練習前に「締める・ゆるめる」を確かめる
骨盤底筋の練習では、収縮する力に加えて、力を抜けるかも確認します。NICEも、収縮・弛緩の状態、不快感、本人の目標に合わせて内容を調整することを勧めています。[5]
息を止めず、肩・お尻・内ももを強く固めない
収縮のあとに、十分に力を抜く時間をとる
痛みや不快感があるときは、無理に繰り返さない
引き上がる感覚や、ゆるむ感覚が分からない場合は、自己流で強く続ける前に相談しましょう。具体的な姿勢と練習手順は、次の記事で説明しています。
何科で相談する?早めに受診したい症状
尿もれが続く、外出や運動を控えるほど気になる場合は、婦人科・泌尿器科などへ相談してください。頻度が少なくても、暮らしの中で困っていれば相談する理由になります。[2]
血尿・排尿時の痛みは、速やかに相談
尿が出ない・強い下腹部痛は、すぐに受診
急に尿が出なくなった、強い下腹部痛がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。骨盤底筋の練習を続けて待つ状況ではありません。[6]
相談前にメモしておくこと
いつから、どんな場面でもれるか
頻度・量の目安と、強い尿意があるか
排尿時の痛み・血尿・出にくさ、乾燥感など
外出・睡眠・運動への影響、服用している薬
可能なら数日間、飲んだものの量や排尿した時刻、もれた場面を記録すると、相談の手がかりになります。記録を完成させるために、受診を遅らせる必要はありません。[4]
OSTEO®では、骨盤・股関節の動きにも着目する
OSTEO®では、骨盤底筋を強く締めることだけを目的にせず、周囲の骨盤・股関節・背骨がつながって動くことを重視します。まずは、骨盤の形と位置関係を見てみましょう。

骨盤を構成する主な骨には、腸骨・坐骨・恥骨・仙骨・尾骨があります。成人の腸骨・坐骨・恥骨は一体となって左右の寛骨をつくり、仙骨などとともに骨盤を形づくります。
図の動きは、骨盤全体の動きのイメージです。腸骨・坐骨・恥骨を一つずつ別々に動かしたり、骨を広げたりするという意味ではありません。
骨格を支えに、動きと力みを確かめる
OSTEO®の運動設計では、骨盤周囲を一方向に固めず、骨盤全体と股関節を前後・左右・回転の動きで連動させます。痛みのない範囲で、余分な力みを減らしながら動くことを目指します。
座るときは坐骨で支え、立つ・歩くときは股関節や背骨とのつながりを意識します。呼吸が続くか、必要以上にお腹やお尻を固めていないかも、身体の使い方を知る手がかりです。
これはOSTEO®が大切にする骨格と運動の見方です。尿もれへの治療効果は、ここで紹介した診療指針からOSTEO®へ置き換えて判断することはできません。
症状に合う治療や骨盤底筋の練習を受けながら、無理のない身体活動を続ける。そのために、骨盤や股関節の動きを知り、日常の座る・立つ・歩く動作へつなげていきます。

更年期には、尿の悩みのほか、骨の健康や関節の違和感、睡眠なども気になりやすくなります。その日の体調に合わせて運動を選ぶ考え方は、次の記事にまとめています。
まとめ
尿もれは、起こる場面を確かめて相談する
症状に合う練習と、収縮・弛緩の確認が大切
血尿・痛み・尿が出ない症状は受診を優先
骨盤・股関節も意識し、無理のない活動へつなぐ
参考文献・公的資料
[5]NICE NG210. Pelvic floor dysfunction: prevention and non-surgical management. 推奨1.3.15–16、1.6.18。
資料確認:2026年10月9日。この記事は一般的な情報提供を目的とし、個別の診断や治療は医療機関でご相談ください。
▶ 骨・姿勢・動きを、動画で体験したい方へ。
OSTEO®の動画配信では、骨格や関節のつながりを意識した体操をご紹介しています。体調や医療者の指示に合わせて、無理のない動きから体験できます。
執筆者
黒坂 志穂(くろさか しほ)
広島大学 准教授/株式会社OSTEO 代表取締役。骨に着目した運動プログラムOSTEO®の開発と効果検証に取り組んでいます。




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