更年期はなぜ骨粗鬆症が増える?閉経後の骨を守る対策
更新日:10月6日
更年期に骨粗鬆症のリスクが高まる主な理由は、閉経前後にエストロゲンが減り、骨を壊す働きとつくる働きの釣り合いが変わるからです。
今日から始めることは、今の骨の状態を確かめ、骨の材料になる食事と、骨格から身体の支え方を見直す実践を生活に組み込むことです。必要な治療も、この対策と並行して考えます。
骨密度が気になり始めた今、検査の数字を知るだけで終わらせず、「骨はどう変わり、どう使えるのか」までつなげてみましょう。閉経後の変化と、今日の一食・立つ・歩く動作には、それぞれ取り組めることがあります。
閉経後は、骨の中で何が変わる?
骨は、完成したままの硬い棒ではありません。古い骨を取り除く骨吸収と、新しい骨をつくる骨形成を繰り返す、生きた組織です。
古い部分を取り除く破骨細胞と、新しい部分をつくる骨芽細胞が、骨の入れ替わりを担います。
エストロゲンは、この骨代謝を調整する女性ホルモンです。閉経前後にその量が大きく減ると、骨の入れ替わりが活発になり、骨吸収が骨形成を上回りやすくなります。
骨をつくる働きも続いていますが、取り除く量を十分に補えない状態では、骨量が減っていきます。[1]

女性1,902人を追跡したSWAN研究では、閉経への移行段階ごとに腰椎と股関節の骨密度を調べています。
減少は閉経への移行が進んだ時期と閉経後の初期に大きくなり、閉経前と同じペースで変化するわけではないことが示されました。これは女性を追跡した観察研究の結果です。[2]
この変化があるからこそ、閉経は骨の対策を見直す節目です。同じ50代でも閉経からの期間や骨の状態は異なるため、年齢だけで自分の骨を決めつけず、今の結果と生活を合わせて考えます。
骨密度とホルモン治療を、どう相談する?
骨粗鬆症は、骨折するまで気づきにくいことがあります。骨密度の結果と、軽い転倒などで起きた骨折の経験を一緒に伝えることが大切です。
検査をまだ受けていない方は、閉経状況や低体重、骨折歴、服用中の薬を伝え、今の骨を調べる機会を相談しましょう。[1]
結果票がある方は、測定した部位と方法も確認します。骨密度は原則として腰椎や大腿骨近位部の値を使って判断し、骨折歴も合わせます。YAMの詳しい読み方は関連情報へ。
今回の相談では、「今の私には治療が必要ですか」「次にいつ、どこを測りますか」という二つの問いを用意すると、次の行動につながります。
ホルモン補充療法(HRT)は、骨にも作用する治療の選択肢です。50~79歳の、子宮のある閉経後女性を対象としたWHIの無作為化比較試験では、特定のエストロゲンと黄体ホルモンを併用した群で、骨密度の増加と骨折リスクの低下が報告されました。
一方、この試験の対象と併用療法では、乳がんや循環器の病気なども含めた評価で、全体としての利益は確認されませんでした。[3]HRTは製剤や投与経路、本人の症状・既往歴によって選び方が変わります。
ほてりや発汗など更年期症状も気になる方は、婦人科で「骨の状態と更年期症状を合わせて、私に合う治療は何か」と相談しましょう。骨粗鬆症の薬も含め、治療を選びながら食事と日々の実践を続けることができます。[4]
今日の食事で、骨の材料をどう支える?
骨の材料と働きを支えるために、カルシウム・ビタミンD・たんぱく質を、食事全体で確保します。 カルシウムは骨の主要な材料で、ビタミンDはその吸収を助けます。骨の土台になるたんぱく質や、必要なエネルギーも一緒に考えましょう。[5]
たとえば、今日の食事に乳製品や豆腐、小松菜などカルシウムを含む食品があるかを確かめます。ビタミンDはサケなどの魚や卵、きのこ類に含まれます。
主菜を抜いていないかも見て、魚・肉・卵・大豆製品など、たんぱく質を取れる食品を組み合わせます。
更年期の体重変化が気になるときも、食事量を極端に減らすと骨に必要な材料まで不足しがちです。一つの栄養素やサプリメントだけに頼るより、食べる量と食品の組み合わせを整えましょう。まず今日の一食を見て、足りない食品を一つ補うことから始められます。
骨盤・背骨から、身体の支え方をどう見直す?
骨の健康を考えるとき、OSTEO®では、骨量とともに骨格で身体を支え、関節を介して動きをつなぐ働きにも目を向けます。
背骨を一つの固い柱のように捉えると、腰だけを力ませて姿勢を保とうとしがちです。OSTEO®では、骨盤を土台に、背骨を下から一つずつ積み上げる「骨の積み木」という見方を大切にしています。[6]
実践の順序は、余分な筋緊張を減らし、骨盤や背骨の小さな動きを確かめ、骨と関節の動きを立つ・歩く場面へつなげることです。
腰を強く反らせて形を作るより、骨盤から腰・胸へ連なる骨を意識して、身体の支え方を確かめます。[6]
肩や胸、背中の力みを緩め、骨盤と背骨を中心に動く実践例に「正座骨呼吸」があります(勇崎、2017)。
正座や前傾を伴うこの手順は、身体の状態に合わせて選ぶものです。ここでは、力みを減らして骨盤・背骨の動きへ注意を向ける見方を、毎日の動作を考える手掛かりにします。[7]
立ったときには、骨盤・背骨に加え、床と接する足にも目を向けます。OSTEO®の交互かかと上げは、左右を交替するステップ運動のように、片側のかかとを上げて戻す動きです。上げる側では足指の付け根で床を支え、膝の動きとかかとの上下をつなぎます。[8]

OSTEO®の体操の狙いは、足指の付け根で支える働きを強化し、かかとを簡単に持ち上げられる足へつなげて、骨のてこを引き出すことです。
足の動きを、膝から骨盤・背骨へ続く身体の使い方の一部として捉えます。具体的な動きは、OSTEO®の交互かかと上げの記事で確認できます。
骨の積み木と交互かかと上げは、OSTEO®で実践を組み立てるための骨格の見方です。骨密度検査や治療で確かめる骨の状態と合わせ、自分の身体に合う動きを選んで日常へつなげます。痛みや骨折歴がある場合は、取り入れる姿勢と動きを確認しましょう。
今日から始めるなら、何を一つずつ進める?
まずは、今の骨を知ること、食事の材料を整えること、骨格を意識して動くことを、別々の行動に分けてみましょう。
どれか一つの対策を終えるまで待つ必要はなく、必要な診療と日々の実践を並行して進められます。
骨の状態を確かめる:結果票や骨折歴を整理し、検査・治療と次回の確認時期を相談する。
今日の一食を確かめる:カルシウムを含む食品と主菜があるかを見て、不足を補う。
骨格から動きを確かめる:力みを減らし、骨盤・背骨・足のつながりを、立つ・歩く場面で意識する。
結論|閉経後は、エストロゲンの低下に伴う骨代謝の変化に合わせて対策を見直す時期です。今の骨を確かめ、食事で材料を支え、骨盤・背骨から日々の動きを見直す。自分に合う治療と実践を重ねていきましょう。
参考文献・本人教材
[1]日本産婦人科医会「(1)骨粗鬆症」。医学的解説。
[3]Cauley JA, Robbins J, Chen Z, et al. Effects of Estrogen Plus Progestin on Risk of Fracture and Bone Mineral Density: The Women's Health Initiative Randomized Trial. JAMA. 2003;290(13):1729–1738. doi:10.1001/jama.290.13.1729.。特定のホルモン併用療法を評価した無作為化比較試験。
[4]日本産婦人科医会「(2)更年期障害に対するホルモン補充療法(HRT)」。2017年度版HRTガイドラインなどに基づく医学的解説。
[6]OSTEO®の骨格実践:骨盤を土台に背骨を下から積み上げ、小さな動きを立つ・歩く動作へつなげる黒坂志穂の指導。
[7]勇崎賀雄『50歳からは「筋トレ」してはいけない 何歳でも動けるからだをつくる「骨呼吸エクササイズ」』講談社+α新書、2017年。「正座骨呼吸」の骨盤・背骨と脱力の説明を参照。
[8]勇崎賀雄『「80歳の壁」を越えたければ足の親指を鍛えなさい』。交互のかかと上げを参照。膝の連動と、足指の付け根を強化して骨のてこを引き出す目的は、黒坂志穂の指導に基づく。
関連情報
▶ 骨に有効な体操はこちら。
OSTEO®の動画配信では、骨・姿勢・動きの考え方を実践しながら学べます。
執筆者
黒坂 志穂(くろさか しほ)
広島大学 准教授/株式会社OSTEO 代表取締役。骨に着目した運動プログラムOSTEO®の開発と効果検証に取り組んでいます。





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